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今日は、HERの検査と結果について主治医と面談の日です。大事な日は必ず娘が同行する。娘はHERと一緒に主治医の話を聴き、疑問があればストレートに質問する。曖昧なところがある私たちを信用していない。

御成門の地下鉄から地上に出たとろにEXELCIOR CAFEがある。検査が終わるまで私はここで連絡を待っていることにした。”また入院ということにはならないだろうな”、と少し心配しながらiPhoneで中国語の微博の記事をブラウジングしながら読んでいる。

こんな記事と一緒にインタビュー動画が投稿されていた。
【让人感动的爱情!民工边打工边照顾"傻妻" 从不觉得她拖累我❤️】
1月28日,重庆火车站有 一对从湖北襄樊回来的夫妻。妻子的智力有点问 题,丈夫说, 自己出门打工十余年,一直都带着 妻子在身边,一边打工一边照顾她,从不觉得自 己老婆是个拖累。"这有什么拖累呢?什么拖累都 没有! "

【人を感動させる愛情! 出稼ぎ労働者が働きながら、脳障害の妻の世話をする:これまで私は妻を足手まといと思ったことがない❤️】
1月28日、重慶駅に湖北襄樊から戻って来た夫婦がいた。妻の智力に少し問題があると、夫は言い、出稼ぎに出てから10数年になるが、ずっと妻を連れて来て自分の側においている。働きながら妻の世話をしている。これまで妻が私の足手まといになっていると思ったことはない。 "どんな足手まといになるの? 足手まといなことなど何もありませんよ!” (私の翻訳です)

日本人は優しくて親切と言われている。私もその日本人ですが、そんなに優しくも、親切でもない。ただHERと一緒に病院に来ることを面倒に思ったことはない。

娘からメールが来た。


中国語を勉強しよう。


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by mscomtec | 2018-02-10 16:16 | Essay | Comments(0)
文藝春秋 特別号「脳と心の正体」の池谷祐二と橘玲の巻頭対談
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去年の夏、大学病院のローソンで買った、文藝春秋の特別号「脳と心の正体」で、脳科学者の池谷裕二と作家の橘玲の対談で、池谷裕二が「生命は宇宙を早く老化させるために存在する」と, 飛んだことを言っていたことを思い出した。これに対して橘玲は「気宇壮大な説で面白いですね、ぜひSF小説にしてください。」と受け流している。

私は熱が専門の機械屋だったので、"エントロピー"と言う言葉が頭に残っていた。

このような内容です。

脳は人間の体重の2%であるが、エネルギー消費量は20%と燃費が悪い。脳を食わせるために、人間は苦労して食料を調達しているようなものだ。では、何故多大な労力を費やして、ここまで脳を発達させたのでしょうか。

池谷裕二は「宇宙を早く老化させる」ためです、と言っている。

ビッグバンから始まった宇宙のエントロピーは増大している。「エントロピー増大」とは、秩序立った高エネルギーの状態から、無秩序な低エネルギーの状態へと移行していく不可逆変化です。しかし、この宇宙の不可逆変化に逆行しているものがあります。・・・それは生命です。生命は数ヶ月ですべての細胞を入れ替えてしまいます。つまり不可逆変化に逆行しているということです。

宇宙が人間の不可逆変化を許容しているのは、「人間が宇宙の老化(エントロピー増加)を早めるために存在する」からで、人間を見ればわかるように、脳を持った生物は宇宙を、自然を破壊する能力が、すなわちエントロピーを増大する能力が非常に高い。戦争、自然破壊、地球温暖化など、人間の高い自然破壊能力は、発達した脳の賜物である。

そう言えば英国の理論物理学者のホーキング博士は、人類は100年以内に滅亡する危機があると警告していましたね。

しかし人間には寿命があって、死んだら無秩序な元素になってしまうでしょう。でも生植によって子孫を残している.....やはり不可逆変に逆行している.....

文藝春秋SPECIAL 2017年夏号[雑誌]

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by mscomtec | 2018-01-17 04:24 | Essay | Comments(0)

「もう東京タワーは見たくない」

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地下鉄御成門の地上に出た。目の前に東京タワーが見える。立ち止まってHerに「今年最後の東京タワーだな」と言ったら、「もう見たくない」と背を向けて歩き出している。病院の個室から見えた夜の東京タワーの鮮やかな電飾がHerには寒々しく見えたのでしょう。

今日は今年最後の病院です。2月から入院、手術、検査、入院、手術、治療と、延べ100日くらい病院に来ている。皮肉にも人生で一番長い時間をHerと共有した一年だった。今は一人でも通院できるが、心配しながら帰りを待っているよりは一緒の方がいい。

病院の外来棟に入り、再来自動受付機に診療カードを差し込むと予定の診療表が出て来る。今の病院はシステムが止まったらどうなるのだろうか、と心配になるくらいIT化されている。時間は午後1時半、会計の前の電光掲示板を見たら,1030番まで表示されている。つまり、もう1030人の患者が会計しているということです。

早めに家を出たので2時半の検査にまだ1時間はある。病院内でランチを食べることにした。始めて来たときは広くて複雑な病院に戸惑ったが、すっかり慣れてしまった。いくつかレストランはあるが、入院棟まで歩き、地下にある蕎麦屋に入った。ざる蕎麦を頼んだ。Herが「美味しい」と言った。蕎麦屋は松寿庵です。本当に美味しい。ここでざる蕎麦を食べたのは始めてではない。Herは味覚障害の時期があったので、味がわからなかったのでしょう。

Herが検査している間は本を読んでいて退屈することはない。今日は西加奈子の『窓の魚』を再読している。五感が鋭く、それを文章にできる天才ですね。

4時、会計番号は1417番でした。推定すると1日2,000人くらいの来院でしょうか。内幸町、日比谷と歩くつもりだったが、北風が冷たいので真っ直ぐ帰ることにした。

御成門に向かうと、染まる空を背景にした東京タワーがまた大きく見えたきた。

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by mscomtec | 2017-12-28 04:28 | Essay | Comments(0)
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HERが抗がん剤を飲み始めて20日経った頃、正直に副作用が現れ始めた。それまでは大して変化がなかったHERの髪が抜け始めた。

ただHERについては、担当医の判断で抗がん剤治療を一時中断している。免疫力が低下して他の病気を再発したからです。

HERの髪が少し生え始めた。それがまた可愛いのです。西遊記の三蔵法師のようです。何か良いことがありそうで、私はHERの頭を一日数回撫でている。
娘たちも、似合っているよ、そのままでいいんじゃないの、と無責任なことを言っている。

本人も楽なようだ。髪を洗うのにシャンプーは少しでいいし、さっと洗えて、乾かす必要もないし、と言っている。

もちろん出かける時はウィッグをつけている。これがまた良くできている。しかし犬のモアナだけはごまかせないようだ。何か異物に見えるのでしょう。

ガンに関する本は何冊も読んだ。抗がん剤治療に否定的な本も読んだ。しかし、いくら読んでも、私が抗がん剤治療の是非について言えるわけがない。担当医、本人、そして家族で相談して最善と思われる治療法を決めるしかありません。

今は放射線治療を受けている。土、日を除いて25回連続です。


by mscomtec | 2017-08-26 02:34 | Essay | Comments(0)

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23日の東京新聞のコラム『筆洗』は、作家吉村昭の"小学時代の夏休みの宿題"が書き出しになっている。

「小学生時代、夏休みの宿題はかなりの量であったが、それを私は、夏休みがはじまった日から遊ぶこともせずにこなし、五日ほどで仕上げた。それから夏休みの間、宿題の日記だけを書くだけでのんびりと過(すご)した」。

コラムの本題は、大規模金融緩和によって物価を上昇させデフレ脱却を図る宿題がなかなか終わってないのに、さほど気にしないで6回も締め切りを延ばしている日銀を揶揄している。

この結末はどうなるのか心配なことであるが、私が心配してもどうにもなることではない。

いま気になっているのは、明日愛媛から羽田に着く小学5年の孫の夏休みの宿題です。私の義務は、2週間あずかっている間に宿題を終わらせることで、娘から、「読書感想文」と「自由研究」だけは絶対に終わらせるように、と念を押されている。

本を読ませるだけで大変なのに、原稿用紙3枚の感想文を書かせることを考えると気が遠くなりそうです。また去年の「自由研究」は「紫外線」で、孫は、その「自由研究」で賞をもらったそうです。今年も「どんな自由研究したい?」と訊ねると、「じいちゃんにまかせるよ」でしょう。それで、今日は丸善に行って、ずっと「自由研究」のテーマを探していました。



by mscomtec | 2017-07-24 00:47 | Essay | Comments(0)

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大学病院のHERの主治医は女性です。まだ30代でしょうか。初めて会ったとき、俵万智に似ているな、と思いました。つまり大人可愛いお医者さんです。


「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日(俵万智)


明日は七月六日、「サラダ記念日」です。


30年前の1987年に刊行された、俵万智の『サラダ記念日』と村上春樹の『ノルウェイの森』は忘れられない2冊です。文学的なショックを受けたとか、そんなレベルの高い理由ではありません。この年に私は転職しました。娘は10歳と7歳、家の銀行ローンはまるまる残ってる。そんなリスクを抱えた転職でした。だから『サラダ記念日』と『ノルウェイの森』は私の人生の節目に挟まれた栞です。


明日はHERの手術の日です。だから明日は、

「これで治るよ」と君がいったから七月六日は「全快記念日」


こんな時代もあったかな〜

潮風に君のにおいがふいに舞う 抱き寄せられて貝殻になる(俵万智、『サラダ記念日』)



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by mscomtec | 2017-07-05 16:52 | Essay | Comments(0)
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11時過ぎ、TwitterのNHK速報で
小林麻央さんが亡くなったことを知った

言葉が出てこない

妻と並んで窓の外をじっと見ている
白いレースのカーテンを透かして
梅雨の合間の空が見える

妻が、独り言のように
「空が青い....」と言った

ここは大学病院の乳腺科外来

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by mscomtec | 2017-06-23 21:42 | Essay

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朝一番の手術だった。

7時50分に看護師が迎に来た。手術棟へ通じる専用エレベーターの扉が閉まろうとしたとき、HERは振り返り腰のあたりで小さく手を振った。HERには手術の恐怖心も不安感もない。”川の流れに身をまかせる”、そんな不思議なひとです。


手術を執刀する教授が、「まあなんとかなるでしょう」と楽観的だった。心配性の私には、その言葉が頼もしく聞こえた。楽観的な言葉の裏に、最悪のリスクを想定したシミレーションはできていると感じたからです。


手術が終わるまでの5時間、ロビーで看護師の連絡を待っている。いろいろなことを考えてしまう。

ずいぶん前のことである。

「おまえが死んだら殉死するから」と言ったことを思い出した。

 HERは、

「死ねるものなら死んでごらん」と言った。愛情表現とでも受け取ったのでしょう、まんざらでもなさそうだった。

何故そんなことを言ったのか覚えていない。三島由起夫の『憂国』でも読んだ後だったのでしょうか、たぶん私に何か後ろめたいことがあったのでしょう。

HERは「あなたより先に死ぬことはないから」と言った。

先に死なれては本当に困るのです。私の母が、HERは息子を甘やかし過ぎる、あれでは息子が何もできないのがあたりまえだ、と言っていた。そう、何もできないのです。


手術が終わったようで、看護師が呼びに来た。執刀した教授の説明がある。私は、エレベーターのなかで、看護師をちらちら見ては表情を読み取ろうとしていた。


麻酔から覚めたHERの最初の言葉が、「ゴミ出しの日だから、ベランダのゴミを出すのを忘れないように」だった。周りの心配をよそに、本人は寝て起きたつもりのようだ。


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by mscomtec | 2017-06-18 01:13 | Essay | Comments(0)


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大学病院の面会時間まで1時間ある。御成門の地下鉄を出たところの喫茶店エクセルシオールに寄った。


二階にあがる階段で、ガシャンと音がして、アイスコーヒーが飛び散って来た。60歳くらいのサラリーマンがトレーからアイスコーヒーを滑り落とし、あわてて割れたガラス片を拾おうとしている。お店の女性が駆け上がってきて、「お客さん、怪我をします。そのままにしてください。新しいのすぐお持ちしますから、二階の席でお待ちください」と言った。実直そうなサラリーマンは本当にすまなそうに、「悪いことしたな」と謝っている。そして私に「服汚れませんでしたか」と言った。



日本を観光に訪れた中国人が微博(Weibo)に、こんなことを書いていた。東京駅の八重洲地下街で、おみやげに買ったお酒をお店の前で落としてしまった。すると、お店の人がさっとすべてを片付けて、笑顔で新しいお酒を渡してくれた。信じられないことだったと。


さて、HERは毎日来なくてもいいよ、とは言っているが時間通りに行かないと心配するから。今日、梅雨の雨が降り出した。



父が喜びそうなギフト

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by mscomtec | 2017-06-13 16:46 | Essay | Comments(0)
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今日は御成門の大学病院で脳のMRA検査です。妻が検査室に入って行った。
私は待合室の長椅子に座り、MRA検査について説明するビデオモニターをぼんやり見ている。トンネルのような装置が映し出され、閉所恐怖症の人は検査前に申し出てください、と言っている。

閉所恐怖症! 私は閉所恐怖症です。あんな狭いトンネルに寝かされたら数分も正常を保てません。私には無理です。

閉所恐怖症になったのは27,8歳の頃で、朝の満員電車が原因です。その日は電車のダイヤが乱れていて、乗った電車は身動きひとつできない超満員でした。前後左右から圧迫され、それに風邪気味で鼻がつまっていたこともあって、呼吸が困難になり大声で叫びたいほどの精神状態になってしまいました。それ以来、狭いところで体の動きが少しでも拘束されると、またあの精神状態になるのではないかという恐怖心が離れません。

そう言えば最近、村上春樹の小説『騎士団長殺し』を読んでいて息苦しくなりました。それは閉所恐怖症だったはずの肖像画家の主人公が、這いつくばって狭い真っ暗な地下道を通り、重い石板で塞がれた石室のなかに何日か座り込んでいた箇所です。
村上春樹自身は閉所恐怖症ではないでしょう。村上春樹の小説には深い井戸、暗い地下がよく登場します。

そんなことを考えていると、妻が検査を終えて出て来ました。
「トンネル大丈夫だった?」と聞くと、
「ぜんぜん平気よ、眠っていた」
周りの心配をよそに脳天気な妻です。そして妻の脳にはなんら異常はなかった。これで妻は足の先から頭の天辺まで全身検査したことになる。


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by mscomtec | 2017-04-22 07:00 | Essay | Comments(0)