ア、秋

夕方、犬を散歩させていたらドングリのようなものが落ちている。まだ青く葉っぱもついている。たしかにドングリだ。今朝の強い風で落ちたのだろうか。太宰治の短い短い小説”『ア、秋』を思い出した。まだまだ暑さは続くようだ。でも夜窓から流れ込む風に秋の気配を感じる。

秋 ハ 夏 ト 同時 ニヤッテ 来 ル。 と 書い て ある。夏 の 中 に、 秋 が こっそり 隠れ て、 もはや 来 て いる ので ある が、 人 は、 炎熱 に だまさ れ て、 それ を 見破る こと が 出来 ぬ。 耳 を 澄まし て 注意 を し て いる と、 夏 に なる と 同時に、 虫 が 鳴い て いる の だ し、 庭 に 気 を くばっ て 見 て いる と、 桔梗 の 花 も、 夏 に なる と すぐ 咲い て いる のを 発見 する し、 蜻蛉 だって、 もともと 夏 の 虫 な ん だ し、 柿 も 夏 の うち に ちゃんと 実 を 結ん で いる の だ。   秋 は、 ずるい 悪魔 だ。 夏 の うち に 全部、 身支度 を ととのえ て、 せせら笑っ て しゃがん で いる。 僕 くらいの 炯眼 の 詩人 に なる と、 それ を 見破る こと が できる。 家 の 者 が、 夏 を よろこび 海 へ 行こ う か、 山 へ 行こ う かなど、 はしゃい で 言っ て いる のを 見る と、 ふびん に 思う。 もう 秋 が 夏 と 一緒 に 忍び込ん で 来 て いる のに。 秋 は、 根強い 曲者 で ある。 (太宰治 『ア、秋』から引用)
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by mscomtec | 2018-08-18 01:46 | That day, That Time | Comments(0)